スペシャル

第4話「『対話』の結末」

~ザッハガルド城内・広間~

「さて……会議の続きとしよう」
「先日は共闘についてのお話が半端なままで終わってしまいましたね」
「ああ、そうだ。ひとまず私の意見だが、万が一に備えて同盟の結成を支持する」
「同盟の存在は心強く私も賛成ではありますが、権限の局地化は避けたいですね」
「同盟により結成された「いかなる団体」も私物化しないという信頼感がある者など存在しないじゃろう」
「各国の代表全員がリーダーでは駄目なのか?」
「意見がぶつかり合って同盟ごと崩れ去るネ。本末転倒アル」
「最終的には対ルシファーだけでなく今後何が起こっても対応できる規模の、安定した同盟を目指したい。天界を敵とみなすことも、今後ないとは言い切れないだろうからな。そう、脅威はひとつとは限らない」
「あまり考えたくはありませんが、同意いたします……」
「うう……難しい問題じゃのう……」
「そうだな……各国、有事の際には独立して動ける者たちを集めるのはどうだろうか。無論、充分な戦力の提供を約束の上で、だ」
「半端な者じゃウチが用意する物資を扱えないアル。精鋭を揃えないと痛い目見るアルヨ」
「じゃが、結局は誰をリーダーにするかの問題が残ってしまうのではないか?」
「リーダーを立てなくても問題なければいいのですが……」
「各地の精鋭部隊とはいえ、指揮命令系統が明確でないと混乱は必至ではないかのう」
「私たちに降りかかる脅威へ立ち向かうという目的は同じですし、各団がそれぞれ適切な行動を心がける…というのが理想ですね」
「「国の垣根を越え、信頼し合い、 皆で問題解決に挑む」これを加盟の条件としたい。よって、我々各国・各地の代表者が「協力」の意を違えなければ問題はないだろう」
「お互いを信じ、寄り添い合うことで成り立つ同盟……素敵ですね」
「ああ、それが最適だとは言い切れないが、誰が責任者になろうと反発する者は出てくるだろうからな」
「細かな指示や命令は各団に委任、最終的に襲いくる脅威を退けることができればよい、か」
「それぞれが「自分の言動には責任を持つ」ということじゃな。うむ」
「マルドゥークちゃん、今の話わかったの?……すごい」
「当然じゃ!あとでトゥールラちゃんのお部屋で一緒に復習しようぞ」
「んー……後ろの人たちがいるから、大丈夫…だけど、マルドゥークちゃんのお部屋には遊びに行きたいな」
「もちろん歓迎じゃ!おもちゃと美味しいお菓子を用意して待っておるぞ!」
「陛下、そのようにはしゃいではなりません。まだ会議は終わっておりませんぞ」
「いや、今日はここまででいいだろう」
「おやつタイムじゃ!」
「おやつタイム」
「でしたら本日は、私の作ったお菓子を召し上がっていただきたいです」
「なんじゃ、そなた我が物顔で他国の……それも王城のキッチンを借りたのか?」
「レオノーラさんのご厚意で調理場をお借りしたの!」
「ふっ、途端に賑やかになったな。面白い者たちだ……アベル、あとは任せたぞ」
「えっ…あ、はい。承知いたしました、レオノーラ様」
「はるばるザッハガルドに来てまで好感度上げの草の根活動とは感心じゃのう」
「私が好きでやっているんです…!そんな発想ありませんでしたわ。ブルピアーさんはいつもそのようなお考えで動いていらっしゃるのね」
「余は甘いものが食べたい気分じゃ。」
「うーん、塩味のあるものと交互に食べるのも……アリ」
「あの、皆さまお部屋の移動を──」
「おお、怖い怖い。そのように怒るフリンデルこそ図星だったからではないのか?」
「あら嫌だわ、ブルピアーさんはお疲れなのね。私が怒ってるように見えるだなんて…お部屋に戻ってお休みになられたらどうかしら?さあ、マルドゥークさん、トゥールラさん、私は果物を使ったタルトタタンという──」
(これは…… どうすればいいんだろう……)


【白の大地サミット編】

■ 第1話「『対話』の始まり」
■ 第2話「『何が』できるのか」
■ 第3話「『美味しい』話」
■ 第4話「『対話』の結末」
■ 第5話「『有意義』な時間」
■ 登場人物紹介(相関図)


【アベルのマル秘資料】

① ザッハガルドについて
② アスガルドについて
③ マルドゥークについて
④ スー商会について