スペシャル

第1話「『対話』の始まり」

~ザッハガルド城内・広間~

「皆さま、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。定刻になりましたので、これより会議を始めます」
「議題は……訳知り顔をした秘密主義者たちの鼻を明かす、だったカ?」
「ふむ……適切な表現ではないがおおむねそのとおりだ。空高くに浮かぶ国と我々が認識している「天界」は「何か」を秘匿している。その「何か」が「天界のみ」で収束できることならば介入する必要もないが…」
「ルシファーの堕天と七罪の存在は妾たちにも影響がある、と考えておるのじゃな」
「…………」
「モルルが増殖して天使たちが大騒ぎしたのも記憶に遠くないのう…」
「事実、ルシファーさんの堕天は彼が「何か」を知ったことが原因だといわれていますね」
「なんじゃフリンデル。そなたが妾に同調するとは。明日はこのザッハガルドに嵐でも到来するかのう」
「わ、私は真面目に討論をしようとしているだけです…!こほん……ルシファーさんが悪に堕ちたというだけで騒いでいるのか、知られた「何か」が重要なのか、もっと他にも理由があったのか…」
「ルシファーの堕天はともかく、七罪については出所のわからん噂話ではないのか?」
「火のないところに煙は立たないネ。まあ、堕天の真実はウチも知らないアル」
「含みのある言い方だな。他に何か情報があるのか?」
「ルシファーは、世界規模の混乱を起こそうとしている」この噂だけは事実と思っていいアル」
「世界規模とな?」
「消息筋は教えられないアル。ただウチの扱う情報に嘘はないネ」
「世界規模か…「天界」だけで済むとは到底思えないな」
「「天界」内での出来事だったとしても、浮かぶ大地が落ちてこないとは言い切れませんね…」
「だ、大地の崩落……被害など考えたくもないのう……」
「杞憂アル。ここで頭を悩ませても、解決にはならないネ」
「そなた、七罪の構成員は調べられぬのか?」
「それぐらいなら簡単ネ。ただ、当然それなりの報酬をいただくアル」
「ホッホッホ。依頼のつもりではなかったのじゃが商人にとってはこのサミットも商売のひとつだったか?」
「まさに今無償で情報を渡したアル。まだウチらにタダ働きを強要するのカ?」
「貴様ら商人にとって情報が商品であることは承知している。だが、ここに参加する以上は互いに協力することを約束していたはずだ」
「……新たに調べなおすことはしないアル。今ウチが持ってる情報だけなら共有するネ」
「ああ、それで構わない。ではタオ・スー殿、後ほどアベルへ共有を頼む。本日は以上にしておこう。解散だ」


【白の大地サミット編】

■ 第1話「『対話』の始まり」
■ 第2話「『何が』できるのか」
■ 第3話「『美味しい』話」
■ 第4話「『対話』の結末」
■ 第5話「『有意義』な時間」
■ 登場人物紹介(相関図)


【アベルのマル秘資料】

① ザッハガルドについて
② アスガルドについて
③ マルドゥークについて
④ スー商会について