スペシャル

第5話『動き出した運命(さだめ)』

~カマリの屋敷~

「ただいま帰りました!」
「お嬢様、おかえりなさいませ
旦那様もお待ちですよ」
「仕事がこーんな山になってるので
出迎えはできませんけどね」
「アルカ様もおかえりなさいませ
ご無事でお何より」
「……私は任務を全うしただけです」
「はい、だからこそです
さて、では旦那様のもとへ
行きましょうか」

~カマリの執務室~
コンコン

「旦那様、お嬢様とアルカ様が
おかえりです」
「どうぞ入ってください」
「ふたご座の皇子、ポルカ
ただいま帰りました!」
「いて座の皇子、アルカ
任務を全ういたしました」
「二人ともおかえりなさい」

すすす……

「旦那様、いつも通りに
振舞っていますが」
「お嬢様が出立してから
ずっと心ここにあらずで
そわそわしていたんですよ」
「エルハ、聞こえていますよ!」

カマリはポルカに歩み寄り、しゃがみ込んだ
ほっとしたように笑いカマリはポルカの頭を撫でる

「はじめての皇子としての仕事は
どうでしたか?」
「えっとね、途中でドタバタが
あったけど……」
「けど?」
「アルカおねーちゃんが
守ってくれたよ!
パーティは楽しかった!
おにーちゃんにお土産あるの」
(おや……これは……)
「それはよかったです
アルカも、ご苦労様でした」
「それが私の任務ですから」
「相変わらずですね、君は」
「ポルカ、疲れてるでしょうから
もう休んでいいですよ」
「話は明日ゆっくり聞かせてください」
「はーい!
……アルカおねーちゃんは
泊まっていく……?」
「いえ、私は……」
「せっかくなので、
泊まっていってください
報告も……長くなりそうですし」
「……カマリがそう言うなら」
「では、俺は客間の
準備をしてきますね
お嬢様、行きましょ」
「カマリおにーちゃん
おやすみなさーい」
「はい、良い夢を」

ぱたぱた

「随分とポルカに
懐かれたみたいですね」
「そうですか……?」
「あの子が「おねーちゃん」と
呼ぶのは心を許した
相手だけなのですよ」
「……心を許されるようなことは
何もしていませんが」
「うーん……
そういうところですよねえ」
「……?」
「こほん……
……それで?」

カマリの雰囲気が一気に変わる
保護者の顔から、皇子たちの長へと

「貴方のことですから
もう把握していると
思いますが……」

デスクの上にパトリスが着けられていた装置を置く

「道中襲ってきた少年に着けられていました」
「……これは……なんですか?」
「……洗脳装置、ですか」
「なるほど……
とうとう彼らが動き出しましたか」
「彼ら……例の組織ですか?」
「ええ……
運命(さだめ)が動き出しましたね」
「……いいことなのか
はたまた……悪いことなのか」

カマリはデスクの引き出しから
一通の手紙を取り出した

「その紋章……
フェルグからの手紙ですか?」
「ええ、どうやら双魚宮を探っている
鼠がいたそうです」
「サマカが捕らえたそうですが
さて……今回の件と関係があるのか
ないのか……」
「こういうときに限って
天秤は何も
語ってはくれないのですよね」
「今はまだ時期ではない
ということでしょうけど」

やれやれとカマリは肩を竦めた

「……カマリ
聞きたいことがあるのです」
「なんでしょう?」
「ポルカと接しているうちに
胸の奥が……
温かくなったのです
これは一体……
どういう感情なのですか?」
「それに、あの子を守らなければと
思ったとき
不思議と力が湧いてきました」
「今までこんなことはなかったのに」
「……そうですか
それは愛おしいという
感情です」
「君にも守りたいと思う存在が
できたのですね」
「守りたい……私は守護者です
元々、守ることは義務ですから」
「役割としての義務ではなく
君個人があの子を守りたいと
そう心から願っているのですよ」
「……僕はそれを
とても嬉しく思います」
「それは君を強くするでしょう
……ですが同じくらい
弱くもする」
「理解しかねます」
「いずれわかりますよ
大丈夫
アルカなら乗り越えられます」
「……カマリがそう言うのなら
私は信じるだけです」
「長く引き留めてすみません
そろそろ休んでください」
「はい、失礼します」

一礼してアルカは執務室を出て行った

「……ふう
さて、僕はもう一仕事しますかね」
「紅茶を淹れましょうか?」
「ええ、お願いします」

フェルグからの手紙にカマリは視線を落とす

「この胸騒ぎが
杞憂で終わればいいのですが」

大きな窓からカマリは星々を見上げた

「動き出した運命(さだめ)からは
逃れられない……」
「せめて、みなが心安らかで
過ごせるように……」
「僕は祈ることしか
できないのでしょうね」

カマリの声に応えるように星々は一層輝きを増した
おわり


【12星座の軌跡~忠誠のいて座と無垢のふたご座~】

■ 第1話『波乱の幕開け』
■ 第2話『初仕事とお久しぶり』
■ 第3話『予想外の乱入者』
■ 第4話『いざ陰謀渦巻くパーティへ』
第5話『動き出した運命(さだめ)』
■ 登場人物紹介(相関図)


【教えて!カマリさん!】

① ポルカ
② アルカ
③ エルハ
④ クラビ
⑤ パトリス
⑥ ザミエル
⑦ カマリ
⑧ フェルグ
⑨ サマカ